山本研究室(山本研)が2012年4月に微生物病研究所(微研)でスタートしてから、あっという間に13年が経過しました。その間、時代は平成から令和に変わって、コロナ禍もあり、もう令和も7年目になろうとしています。研究室の名前は「感染病態分野」ですが、英語名は「Department of Immunoparasitology」すなわち「免疫寄生虫学分野」であり、これは兼任の免疫学フロンティア研究センター(IFReC)での教室名ともなっています。
私は山本研の責任者である山本雅裕です。山本研では「免疫寄生虫学」をやっています。山本研が目指す免疫寄生虫学とは、これまでの免疫学者が免疫応答を観察するために寄生虫をただの道具として使用する、または寄生虫が生体に引き起こす免疫反応を免疫学を知らない寄生虫学者が何となく免疫実験をするというどちらか一方に立った従来の研究観でなく、「寄生虫の視点から宿主免疫応答を考える、逆に宿主にしてみれば何故こちらが用意した免疫機構があるのに寄生虫はそれを回避できて病気を起こせるのか?」という、寄生虫も宿主のどちらも重要であるという「寄生虫⇔宿主」の双方向の視点にたった研究観に基づいています。2025年4月現在でも日本の免疫寄生虫学や感染症免疫学ではまだ一方向の研究がほとんどだと思いますが、「Immunoparasitology」の中心である欧米では双方向の研究が一般常識的な考え方です。そのような研究観に沿った「宿主―寄生虫間相互作用」を研究した論文がNature・Science・Cellなどのいわゆる三大誌やその姉妹雑誌に次々に出ています。そのような欧米中心の「Immunoparasitology」の研究フィールドに山本研はあえて飛び込んでいますが、欧米のトップの研究グループにできることでも、微研・IFReCに所属している山本研にあるモノとテクニックを以ってすれば十分勝負になっています。時代は一つ一つの遺伝子を調べるというような古き良き時代ではなく、ゲノム編集と大規模統計を組み合わせてCRISPRスクリーニングでまず大事な遺伝子を網羅的に決めるような時代です。私たちは生体レベルで重要な病原性因子を根こそぎ取ってこれる生体CRISPRスクリーニング法を開発して (Cell Rep. 2023; mBio 2024)、世界に食らいついてきました。また山本研が立ち上がって13年間を経て分かったことは、山本研で寄生虫に対する宿主免疫応答で明らかにした内容は、寄生虫のみならず、細菌や真菌、ウイルスといった幅広い細胞内寄生性病原体に対する宿主免疫系に広く当てはまり、予想以上に裾野が広がりました。
また2019年以降新しく始めたプロジェクトとしては、VeDTRマウスシステムという独自システムを使った「がん免疫」やその派生の研究で、始めて6年としては十分かつ効率的に研究成果( J Exp Med, 2021; Cell Rep. 2023; PNAS 2024; Science 2024; Front Immunol. 2024; iScience 2025)を挙げられていると思います。何で「がん免疫」研究を始めたのか?学問的な理由は、トキソプラズマ原虫の「感染免疫」と「がん免疫」が驚くほどよく似ていて、「がん免疫」の理解は「感染免疫」の理解にもつながり、またその逆も然りだと思うからです。詳しくは、研究内容をご覧ください。学問的ではないですが、「がん免疫」をやろうと強く思ったきっかけとなった本当の理由を知りたい方には、機会があればこっそりお教えします。
いつの時代も、研究で一番大事なファクターは「人」です。かつて自分がそうさせてもらったように大学院生・ポスドクが主役となって、一人一人が論文作成は勿論国内外の学会やセミナー旅行を通じて「世界に挑む」ような研究を肌で感じてもらうような研究室を目指しています。平成から令和になり「人」の質も変化したように思います。令和の時代は「タイパ・コスパ重視」です。研究テーマや研究スタイルにもタイパ・コスパが求められる時代になりました。山本研では世界レベルで「Immunoparasitology」や「がん免疫」の最先端研究をタイパ・コスパ良くできる環境が整っています。
ということで、一緒に「Immunoparasitology」や「がん免疫」業界で世界を相手に一暴れしてみませんか?興味のある方は是非、気軽に山本(myamamoto@biken.osaka-u.ac.jp)までメールを下さい。
2025年4月6日 山本 雅裕