研究内容17

寄生虫最大のグループ『アピコンプレクサ』に共通する弱点を発見

 

【研究成果のポイント】

  1. 生体内CRISPRスクリーニング法を駆使し、トキソプラズマ原虫の病原性因子を多数同定
  2. アピコンプレクサに属する寄生虫に広く共通した病原性に必須の遺伝子を発見
  3. トキソプラズマ症やマラリア等の病態解明、新規治療法開発に期待  

 

  • 概要

大阪大学大学院医学系研究科の大学院生の橘優汰さん(博士後期課程)、山本雅裕教授(免疫学フロンティア研究センター、感染症総合教育研究拠点兼任)らの研究グループは、生体内CRISPRスクリーニング技術を駆使して、病原性寄生虫「トキソプラズマ原虫」の病原性発揮に必須の遺伝子を多数同定しました。

トキソプラズマ原虫は寄生虫の一種で新生児や免疫不全患者に致死的な感染症を引き起こします。トキソプラズマ原虫のタンパク質は細胞内の特定の場所に存在することでその機能を発揮します。これまでに世界中で多くの研究が行われてきたにもかかわらず、トキソプラズマ原虫の遺伝子がコードする約8000個のタンパク質の多くは細胞内の局在および機能が依然として不明なままであり、病原性への関与も未知数な状態でした。こういった局在や機能が未知の遺伝子群の存在はトキソプラズマ症の病態解明において大きな障壁となっていました。

今回、山本教授らの研究グループは、以前に同グループが樹立した生体内CRISPRスクリーニング技術を駆使することで、細胞内局在が不明であった約600個のトキソプラズマ遺伝子をマウスの生体内で網羅的にスクリーニングし、必須の病原性因子を多数同定することに成功しました。その中でも医学的に最も重要な寄生虫のグループである『アピコンプレクサ』に共通しているRimM遺伝子に着目し、それがトキソプラズマ原虫の生存に必須であることを証明しました(図1)。本研究成果によりアピコンプレクサが引き起こすトキソプラズマ症やマラリアの病態解明、ひいては新規治療薬やワクチン開発につながることが期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「mBio」に、7月31日(水)に公開されました。

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