日本の超強毒型トキソプラズマは中南米産と同じルーツ
―極東アジアのトキソプラズマの全ゲノム構造を高精細に解明―
【研究成果のポイント】
1) 新型ゲノム解析ツール「POPSICLE」を共同開発:病原体のゲノム構造を直感的に視覚化。
2) 日本のトキソプラズマが示す遺伝的リンク:北米・中南米の系統と遺伝的繋がりを発見。
3) 沖縄における新型超強毒株の産出機構:日本の公衆衛生に対する脅威、迅速な対策が急務。
概要
世界人口の約30%が感染しているといわれているトキソプラズマは、症状の強さなどその病原性が地域によって大きく異なり、一部では1000倍以上の差があります。これまで日本のトキソプラズマに関する詳細なゲノム研究は行われておらず、日本にいるトキソプラズマの危険性やどこが由来なのか(つまり、起源)についてはよく分かっていませんでした。
大阪大学微生物病研究所の猪原史成招聘研究員(研究当時 助教)と同研究所教授の山本雅裕教授(免疫学フロンティア研究センター、感染症総合教育研究拠点兼任)は、革新的な解析ツール「POPSICLE」を駆使し、岐阜大学応用生物科学部・高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンターの高島康弘准教授を始めとする複数の研究機関によって収集された日本の合計15株のトキソプラズマの全ゲノム構造を高精細に解析することに成功しました。その結果、日本のトキソプラズマ集団は、ユーラシア大陸および南北アメリカ大陸の系統との間で独自の遺伝的混血が進んでいることが判明しました。特に注目すべきは、沖縄で確認された新型超強毒株が、中南米系統と同じルーツを持つ弱毒型株と、本土由来とみられる弱毒型株との交雑によって生じ、その病原性が著しく強くなっていることが示唆される点です。この発見は、トキソプラズマが日本国内で静かにそのリスクを拡大していることを示しており、我が国における迅速な公衆衛生医学的対策の必要性を明確にしています。
本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、5月22日(水)18時(日本時間)に公開されました。
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