研究内容15

Th1-Tregの除去は安全に癌免疫を誘導
A genetic method specifically delineates Th1-type Treg cells and their roles in tumor immunity
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Okamoto M, Sasai M, Kuratani A, Okuzaki D, Arai M, Wing JB, Sakaguchi S, Yamamoto M. ​
Cell Rep. (2023) 


大阪大学微生物病研究所の特任研究員の岡本将明さん、山本雅裕教授らの研究グループは、Th1-Tregが様々な腫瘍に高度に蓄積し、その選択的除去によって自己免疫にならずに強い癌免疫を誘導できることを世界で初めて明らかにしました。

これまで制御性T細胞(Treg)のサブセットの一つであるTh1-Tregだけを標識し除去できる技術がなかったために、Th1-Tregの癌免疫と自己免疫における役割についてはよく分かっていませんでした。

今回、山本教授らの研究グループは、任意の免疫細胞集団を標識し除去できる新型マウス(VeDTRマウス)を開発したことにより、Th1-Tregだけを標識し除去できることに成功しました。その結果、Th1-Tregが腫瘍に高度に蓄積し、また腫瘍形成後にTh1-Tregを除去することによって強い癌免疫が誘導され腫瘍の増大が抑制されることことを発見しました。Treg全体の除去は癌免疫のみならず、全身性の激しい自己免疫となりますが、Th1-Tregに絞った除去は癌免疫の効果はTreg全体の除去と同程度だったにも関わらず自己免疫とはなりませんでした。これにより、Th1-Tregを標的とした安全な癌免疫治療法の開発が期待されます。

論文はこちら。

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