多種多彩な新規トキソプラズマ症創薬戦略につながる研究成果。
Host genetics highlights IFN-γ-dependent Toxoplasma genes encoding secreted and non-secreted virulence factors in in vivo CRISPR screens
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Tachibana Y, Hashizaki E, Sasai M, Yamamoto M.
Cell Rep. (2023)
大阪大学大学院医学系研究科の大学院生の橘優汰さん(博士後期課程)、同微生物病研究所 山本雅裕教授(免疫学フロンティア研究センター、感染症総合教育研究拠点兼任)らの研究グループは、データサイエンスで病原性寄生虫「トキソプラズマ原虫」の病原性に関与する遺伝子を宿主生体内で網羅的に探索できる次世代技術(生体内CRISPRスクリーニング法)を開発し、多数の新規病原性因子の同定に成功しました。さらに宿主遺伝学改変技術と併用することで、生体内における病原体と宿主の免疫学的な相互作用を選択的に解析可能であることを世界で初めて証明しました(図1)。
トキソプラズマ原虫は、免疫不全状態のヒトで重篤となるトキソプラズマ症を引き起こす重要な病原性寄生虫です。トキソプラズマ原虫は8000個以上の遺伝子を有していますが、そのうちのどれだけがトキソプラズマ症という病気を引き起こすのに重要な病原性因子であるかは謎に包まれていました。また、これまでの研究ではたとえ新規の病原性因子を同定したとしても、その病原性因子が標的としている我々宿主側の因子を同定することは非常に大きな困難を伴いました。
今回、山本教授らの研究グループは、高病原性トキソプラズマの生体内CRISPRスクリーニング法を開発し、宿主遺伝子改変技術と組み合わせることにより宿主・病原体相互作用の網羅的解析を可能にすることで、トキソプラズマ原虫の決定的な病原性因子を多数同定しました。
本研究が確立した新技術を用いることで、トキソプラズマ症の病態解明、ひいては新規治療薬やワクチンの開発が大いに期待されます。